savage
――どうして、
それだけが思考を埋め尽くす。
どうして自分はこんな目に遭っているのか――それすらもわからずに、土方はがくがくと揺すられていた。
四つん這いにさせられ、後ろから貫かれているこの状況が酷く非現実じみていて、頭が理解を拒んでいるようだった。
なァ――笑い含んだ声が、耳許でささやく。
「野郎に犯されてんのに抵抗しねーの?」
――犯されてる――
背中にひたりと重ねられた肌が汗ばんでいるのは何故なのか、とか、それが一体誰の体なのか、とか。
――銀時に、犯されてる――
不意に、目を背けていた事実がぶわりと押し寄せ、土方は嫌だ、と頭を振った。
密やかな想いを抱いていた相手に犯されている――など。
なんとか抗おうと身を捩るが、抵抗は全て封じられた。
「や、めろ――!」
逃げるように前へと這いずっても、強い力で腰を抱かれ、引き戻される。逃げるのは許さないとばかりに強く穿たれ、土方は背中をのけぞらせた。
「っああ…!」
あげたくもない声を抑えきれないのが悔しくて、唇を噛み締める。
涙で滲む視界に、部屋の隅に転がるものが入った。それは、後ろから犯す男によって放られた、土方の得物だ。
届かないのは承知で、それでも縋るように愛刀へと手を伸ばす。
この悪い夢としか思えない現実から逃れたい一心で空を掻く手は、しかし難なく後ろから掴まれてしまった。
「――なに」
直接吹き込むように耳許で落とされた、低く怒りの滲む銀時の声に体がこわばる。
「そんなに逃げてェの?」
俺から、と続けられた言葉が土方の矜持を煽る。
行為にも今の銀時がまとう空気にも、腹の底が冷えるような怖さと吐き出したいほどの嫌悪を抱いているというのに、意地だけが土方を支え、突き動かした。
誰が逃げるか――振り返り、肩越しに睨みつける。
土方のその目に、「ああ、それより」と銀時はうっそりと笑った。
「殺してェ?」
いいぜ、と銀時は土方の顎を掴み、その目を覗き込んできた。
「命のやりとり、しようじゃねーか。俺に食われたくなきゃ――」
俺を殺せよ――そう言い、噛みつくように口づけられる。
入り込み、好き勝手に蠢くぬるりとした舌を噛んでも、銀時は愉しそうに目を細めるだけだった。
「そんなんじゃ、殺せねーよ」
愉悦を滲ませた声でからかうように言うと、銀時は強く腰をぶつけて奥を突いた。
「あ、あ、あ、あ」
ず、ず、と銀時のものが出入りするのと同じリズムで意味のない声があがる。体中に広がる怖気に似た感覚が、快楽だなどと認めたくなかった。
項を舐められ、ぞわりと走った感覚に背筋を震わせると、固い感触がそこに触れた。次いで襲った、ぎりりとした痛みで、噛まれたことを知る。
まるで捕食する獣のようだ。
今振り返ったら、命のやりとり、などと言った、土方を捕食する男はさぞかし獣じみた目をしているだろうと思った。
――俺に食われたくなきゃ、俺を殺せよ
銀時が土方を食らい、土方は銀時の命を狙う――なんて、殺伐とした関係しか築けない自分たちに、ほの暗い絶望を抱き、土方は唇を歪めた。
――いいぜ
殺してやる――胸の内で呟く。
それを銀時が望むというなら――そんな土方の姿を望むというなら、そうあってやろう。
絶望の淵に密やかな想いを埋め、土方はきつく目を閉じた。
「おろか者の恋」でこっち行きかけたけど戻ってこれそうになくてやめました
(10/12/12 SSS up)
(12/12/08 改訂)
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